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デジタル田園都市構想について
小村 晃一


 政府は2022年12月、デジタル田園都市国家構想戦略を閣議決定した。まち・ひと・しごと創生総合戦略を抜本的に改訂し、27年度までの新たな総合戦略に位置付けた。デジタルの力を活用して地方の社会課題解決や魅力向上の取り組みを進める目的である。
地方での雇用創出に向けて中小・中堅企業に対し、産官学や地域の金融機関によるDXの支援体制の構築に取り組み、年2%の生産性向上を図る。また、地域の形成については人口10万人規模のエリアを目安に官民連携でデジタルを活用して生活の向上を目指す「地域生活圏」の形成を推進する。地域交通は官民や交通事業者間、他分野間の3つの共創による再構築、防災・減災、国土強靭化の着実な実施や、デジタルを活用したインフラの維持管理の効率化も進める。
幅広い分野が関係してくる取り組みである。デジタルの力で夢見た地方の未来は本当に成功するのでしょうか。
田園都市構想の実施している地方で、その現状はといえば今のところ遠い夢のようだ。人口減少が進む今なお、変革を阻む理想と現実の溝は深い。その2例を紹介する。
 
〇北海道更別村
人口約3000人。「100歳までワクワク過ごせる奇跡の農村」をテーマにデジタルサービスの提供を計画。
「田園都市」の構想: 
 高齢者の女性が朝、スマホで病院に予約すると、自宅に自動運転車両が配車される。病院では顔認証で本人確認。医師には女性のウエアラブル端末から体調のデータが共有され、診察後はキャッシュレスで決済。自宅に着くと処方された薬が自動配送サービスで既に届いている。買い物の自動配送サービス、カラオケやマージャン場の提供。
 事業は22年10月より開始されたが、自動運転車両の不具合、配送ロボットは雪が積もると道路を走れないことが解った。何より想定外は、高齢者のスマホ利用の伸び悩みで、無料貸し出しに中古スマホ800台購入したが、利用はわずか75台。使えないままでは事業効果は見込めない。また、月額3980円の利用料を取る予定だったが、村民会員が増えず今も無料で、有料化ができなければ事業の財源が枯渇する。70代の男性「村に協力したいのでスマホを借りたが、使い方が覚えられねえから家に置きっぱなしだ。有料になれば返す」60代女性「有料化に見合うサービスなのか。村民は置いてきぼりだ」

更別スーパービレッジ構想

〇岡山県吉備中央町新山地区
 町から無償で電動車椅子を提供されたが、前方にハンドルがなく、坂道でつんのめったので危険を感じて返却した。10台購入したがほぼ利用されず、安全規格の証明がないため町は回収した。「都会のサービスを享受できる自然豊かな田舎」を目指し、ネット通販や困りごと相談ができる「きびアプリ」の登録者は人口1万人のうち約570人にとどまっている。
デジタル田園健康特区 吉備中央町
「スーパーシティ構想」への取り組み提案書(概要版)
 
 
 デジ田運用では、現在どこの地域もすごく苦労しているのが現状である。しかし、このままでは、日本は住めない地域を増やすことになり、どれだけの人が未来を見て切り替えるか、高齢者にも対応しやすいデジタル化の開発が喫緊の課題であろう。デジタル化は、交付金目当てに早急に推進してもダメだという事例が多い。もっとじっくりと取り組むことが必要で、住民参画なしに行政が進めても住民はついてこないことをあえて提言したい。
エッセイ
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