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2.環境とは

少し間が開いてしまいましたが、今回は「環境」について少し考えてみたいと思います。

前回、公共事業の計画や実施において環境が重視されるようになってきたことを示しましたが、この「環境」という概念があまりはっきりとはしていないことから、実際の具体的な環境への配慮にあたっては多少の混乱があるように思われます。つまり、どうすれば配慮したことになるのだろうか?という点が少し分かりにくいというわけでしょう。
 幸い、農水省では平成14年1月に「農業農村整備事業における環境との調和の基本的考え方」が公表され、引き続いて「環境との調和に配慮した事業実施のための調査計画・設計の手引き」が現在第3編まで公表されていますので、この心配は解消されるものと思います。

ところで、この手引きは「現時点では、一般化した基準とするのではなく、地域の特性に応じて弾力的に運用することを前提とした手引きとして取りまとめ(本文より)」られたものです。つまり、実際の事業では手引きを参考にして地域に応じた調査計画・設計をしなければならないのですが、文書化されたものは一人歩きして金科玉条(きんかぎょくじょう)となってしまう傾向があり、上記のような注意書きにも関わらず、この手引きも事実上の基準・マニュアルとなってしまう、つまり、この手引きどおりにしさえすれば環境との調和に配慮したことになってしまう心配があります。

これを避けるためには、環境というものについて知っておかねばなりません。環境とは何か、なぜ環境を守り、或いは調和を図らなければならないのか、今環境はどうなっていてどうなろうとしているのか等を知ることによって、ただ手引きの記述どおりにすることがそうなのではなくて、今ここで配慮しなければならない環境は何かを考え、それに対する具体的な対応をすることこそが環境を守る・環境との調和を図る事なのだと理解するようになるのです。

それでは環境とはなんでしょうか。実はこれはかなりわかりにくい概念で、いろいろな考え方があるのです。例えばISO14001環境管理システム規格における環境の定義は「大気、水質、土地、天然資源、植物、動物、人間及びそれらの相互関係を含む、組織が活動する場。ここでいう環境は、組織内から地球規模のシステムにまで及ぶ」となっていますし、広辞苑では「めぐり囲む区域あるいは四囲の外界。周囲の事物。人間または生物をとりまき、それと相互作用を及ぼし合うものとして見た外界」となっています。つまり、広義には「自分をとりまくすべてのもの」、狭義には「自分と関係のある(相互作用を及ぼし合う)まわりのもの」となる訳でしょう。いいかえると、環境とは自分によって、すなわち自分のおかれている状況によって変わるものです。なお、環境には自然環境、社会環境、経済環境、教育環境等々、いろいろな定義がありますが、ここでいう環境はもちろん自然環境(自分と関係のあるまわりの自然)のことです。なお、私達は自然を自然環境と同じ意味で使うことが多いので、ここでも自然と環境(自然環境)を同じ意味で使おうと思います。

ちなみに、「自然」に相当する英語は Nature ですが、Nature の本来の意味は 「生まれたままの本性」、「野生」というもので、人間が管理、改善すべきものというニュアンスがある言葉です。本来我々日本人は稲作文化の民族として自然と共生してきたのですが、西欧の価値観への転換と共に自然と対決するようになったのであり、したがって、今や西欧文明の真ん中にいる私達は、必然的に自然を、森林や水資源を破壊するのであり、これが、意識的に、努力して環境に配慮しなければならない理由なのです。なお、破壊とは修復が極めて困難な改変のことを言います。

さて、前記の「手引き」では、自然を原生自然(人間が全く関与しないことにより保全される自然)と二次的自然(人間が関与することにより保全される自然)に分けています。この二次的自然とはいわゆる「里地」や「里山」のことで、環境省自然環境局は「里地里山とは、都市域と原生的自然との中間に位置し、様々な人間の働きかけを通じて環境が形成されてきた地域であり、集落をとりまく二次林と、それらと混在する農地、ため池、草原等で構成される地域概念」と定義して一緒に扱っています。こちらが私たちが普通に感じている「環境」に近いものでしょう。二次林約800万ha、農地等約700万haで国土の4割程度を占めるとされています。二次林とはその土地本来の自然植生(原生林)が災害や人間の行為によって破壊された後に発達した森林で、雑木林と呼ばれたり、里山林、農用林、薪炭林と呼ばれたりしますが、これがいわゆる里山にあたるものです。そして里山を含めた村里、原生林でも都市でもない地域が里地です。なお、この里地については1994年の国の環境基本計画で「里地自然地域」という名前で区分されており、「農林漁業が営まれ、人と自然が共生した暮らしが営まれている地域」のこととされています。

以上、環境についてまとめてみました。次回は環境の現状を見ていきましょう。

目 次

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

農林水産省 : 「農業農村整備事業における環境との調和の基本的考え方」


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